概要

やなぎみわステージトレーラープロジェクト
『日輪の翼』

恵比寿神が漂流し、
一遍上人が遊行した
神戸最古の港にて海上公演!
神戸・兵庫港で花開く
踊り念仏とステージトレーラー!!!

台湾で出会ったステージトレーラーに魅せられ、演劇公演を企てたやなぎみわは、自らがデザインし輸入したステージトレーラーを2014年のヨコハマトリエンナーレで発表。以降、巡礼劇《日輪の翼》(原作・中上健次)を、5都市で野外上演しました。出演者は俳優だけにとどまらず、大地を踏み鳴らすタップダンサー、天空を舞うサーカスパフォーマー、天地を結ぶポールダンサーのほか、ギタリストや和楽アーティストなど、ジャンルも出自も多彩な出演者たちが様々な趣向を凝らし、独創的な万物照応が織りなされます。今年は《日輪の翼》の巡礼を、恵比寿神の漂流と兵庫津で入滅した一遍上人の遊行に重ね、半海半陸の公演地で、踊念仏とともに上演します。ご期待ください。

《日輪の翼》2019年
《日輪の翼》 2016年 新宮公演
(撮影:表恒匡)

『日輪の翼』あらすじ

住み慣れた熊野の〈路地〉から立ち退きを迫られた老婆たちは、同じ〈路地〉出身の若者らが運転する冷凍トレーラーに乗って流浪の旅に出た。伊勢、諏訪、出羽、恐山、そして皇居へと至る道中で、神々との出会いに至福を分かち合う老婆と、女漁りに奔走し性の饗宴を繰り広げる若者たちの、珍妙無比な遍路行。滑稽と悲哀、解放と喪失、信仰とエロティシズム……。〈路地〉という仄暗い「うつほ」をトレーラーに内包した旅に、遥遠なる前近代の神話と物語を求めた、中上健次の転換作であり傑作。本公演では、『日輪の翼』をベースに、『紀伊物語』の「聖餐」、『千年の愉楽』等からも路地の物語を盛り込み、一つの作品を創り上げていきます。

やなぎみわ

1967年、神戸市兵庫区生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。〈エレベーターガール〉や〈マイ・グランドマザーズ〉など、CGや特殊メイクを駆使した写真で、若さと老いといった女性を取り巻く諸問題への洞察を試みる。2009年、ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館の代表作家。2011年からは演劇に取り組み、『ゼロ・アワー 東京ローズ最後のテープ』を国内外で上演。2017年の「港都KOBE芸術祭」では野外劇《日輪の翼》のための移動舞台トレーラーを展示した。京都在住。
http://www.yanagimiwa.net

やなぎみわ演出「日輪の翼」は、野外巡礼劇として
2016年より各地で上演されてきました。

『日輪の翼』は、芥川賞作家・中上健次の小説で、
熊野の老婆たちが全国の神仏をめぐる旅物語です。

鎌倉時代、一遍上人は熊野の神から啓示を受けて開宗され、
遊行の旅を続け、踊念仏と札撒きで民衆を極楽浄土に導き、
兵庫津で入滅されました。
僧侶が帰らぬ船に乗る補陀落渡海の伝説が残る熊野は、
近代には多くの北米南米移民を出しました。
全国の移民を長年にわたり船で送り出したのは神戸港です。

さまざまな境界を越えていった者たち、Transしていった魂を野外巡礼劇に重ねて、
歴史ある兵庫津で上演いたします。

中上健次

1946年、熊野・新宮市に生まれる。『十九歳の地図』で注目を集め、76年『岬』で戦後生まれとして初の芥川賞作家となる。77年『枯木灘』で芸術選奨新人賞、毎日出版文化賞を受賞。「紀州サーガ」と呼ばれる濃密で重層的な作品群を創出した。代表作として上記のほか『日輪の翼』『千年の愉楽』等。1992年46歳で他界。